【FEATURE】<商店建築>から読み解く、JAM HOME MADEの過去と現在
2019.01.21
FEATURE2000-2018年、店舗デザインにおける18年の歴史から浮かび上がる不変の価値観とは
時代の最先端をゆく様々なアートや空間、施設を独自の観点から紹介し続ける、日本を代表する建築雑誌<商店建築>。
発刊号数は優に700号を超え、60年以上愛され続けるモンスター雑誌です。
JAM HOME MADEの1stショップがオープンしたのは2000年。
独創的かつコンセプチュアルなショップは、当時(現在においても)他に類を見ない、革新的な店舗として多くのメディアに取り上げられました。
当時も建築雑誌の第一人者として発刊されていた<商店建築>。
この1stショップもご掲載いただき、多くの反響を呼びました。
時は流れ2018年。
JAM HOME MADE東京店は、ブランド創立20thを節目に、1stショップが誕生した渋谷区千駄ヶ谷の地に原点回帰し、当時の面影を残しながらも、「今」のお客様を最大限おもてなしするショップとして移転リニューアルオープンしました。
■当時のJAM HOME MADE、そしてこれからのJAM HOME MADEを<商店建築>の記事から読み解く
2000年6月、JAM HOME MADEとしての1stショップが千駄ヶ谷に誕生しました。
その店内は真っ白な壁の無響室で、ベルリンのサウンドアーティスト、カールステン・ニコライ氏制作の「音」が飛び交う空間。
商品はしゃがんだり背伸びしないと見ることができず、商品が突然消える什器なども登場した、店舗としての常識を覆すものでした。
しかしこの斬新な内装は、あくまで「音で感じる空間」のための手段として生み出されたもので、その斬新さこそが目的ではありませんでした。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚といった人間の様々な知覚のなかで、視覚に頼りすぎていると感じる時代において、聴覚を刺激されるという体験を提供したい、そこを始点にスタートしたプロジェクトの一部でした。
「すぐには完成しないけど音を絡めたアクセサリーを考えているんです。」
ディレクターの増井元紀は当時のインタビューでそう語っています。
このプロジェクトは現在において継続中でもあるのです。
■2018年、再び千駄ヶ谷の地へ還ったNEWショップのコンセプトは、リアルとバーチャルの融合
「ブランド創立当初からのすべてのお客様を大切にしたい」という思いから生まれたのは、インターネットでの購買行動が当たり前となったこの時代に、リアルとバーチャル、すべてのお客様に平等のサービスを提供したいという試みです。
インターネットでは24時間好きな時間に誰にも邪魔されることなく購入することができるという利点があります。
せっかくリアルショップに足を運んでくださるお客様にも同じように自由にショッピングを楽しんでもらいたい、その気持から端を発したのが“自動販売機”というアイディアです。
また、バーチャルのお客様をリアルタイムで店舗の壁面に投影することによって、リアルとバーチャルのお客様を同じ空間に迎えてお買い物体験を共有していただくことを実現しました。
それとともに、ブランドのスタッフもバーチャルのお客様を視認することにより、一人ひとりのお客様への細やかな対応への意識も高められています。
結果としてこうした仕掛けは耳目を集め、メディアでも多数とりあげられることとなりましたが、これらもまた、手段であり、目的ではありませんでした。
■1stショップから18年の時を経て期せずして通底しているのはリアルショップの意義へのこだわり
即時性や情報量でインターネットには勝てないリアルショップにこれからも求められ続けるのは、そこに行くことでしか得られることのない思い出やコミュニケーションです。
商品を陳列して販売することだけにプライオリティを置いているのではなく、ストーリーを提供し、さまざまな知覚を刺激し、体感した経験を共有してもらうことを、JAM HOME MADEは何より重視しています。
こうあるべきという既存の価値観を一度壊し、再構築して生まれるアイディアは、奇をてらうことを目的としたものではなく、思いを伝えることを多角的に見つめ直して突き詰めた表現。
機能性の追求こそがデザインの本質的な価値につながる。という信念から生み出され続けてきた独創的で革新的な店舗は、「肌に最も近いプロダクトをメインにデザインの本質的な必要性(=『思いやり」「笑顔』)を主張し、提案する」というブランドコンセプトを思い起こせば、必然とも言えるのです。
空間撮影:髙山 幸三